2005年11月06日

論文の書き方(11) 意匠・商標の攻略法案

今回は、論文本試で意匠法・商標法をどの様に攻略したら点数が上がるかについて説明したいと思います。

最近の意匠法・商標法の論文試験は、

  • 長文で事例関係が複雑

  • 小問形式で問われていることが多い

  • 書かなければならない項目が多く、時間が足りない

という傾向があります。

それぞれ1時間半の解答時間があるので、特許などに比べて時間が十分にあるように思えますが、実はそうでもないんです。特許・実用新案は2問出題されるのに対して、意匠・商標はそれぞれ1題ずつしか出題されません。その1題で受験者の理解を確認しようとしているためか、項目をたくさん列挙させる問題が出題されているようにも思えます。

受験機関の答練の問題は問題文が短めで問われている項目もそれほど多くないので、まず時間がなくなることはありません。答練と同じ感覚で論文本試に臨むと時間が足りずに痛い目にあいますので意匠・商標は注意する必要があります。

1時間半の解答時間で皆さんは何分答案構成に時間をかけるでしょうか。自分が受験したときは、だいたい20分~30分ぐらいだったと思います。おそらく、受験生の平均ぐらいでしょう。残り1時間程度使えば十分に解答するだけの時間があるからです。

一方、本試で私は答案構成に割いた時間をその半分の10分~15分にしました。本試で出題された問題文の長さと事例の複雑さから項目をいつも以上に列挙する必要があると考え、自分の筆力と相談した結果、答案構成に割く時間をなるべく短くすべきだと判断したからです。

それだけ答案構成の時間を切りつめるには瞬時に複雑な事実関係を判断する必要がありますが、そこは今までの学習成果といろいろな問題を見てきた勘で乗り切りました。おかげで、時間内に列挙すべきだと思っていたすべての項目、すべての内容を記載でき、手応えのある結果になりました。(事実、結果もよかったそうです)。


事実関係の理解が得意な人、答案構成するのが早い人、筆力がある人、それぞれ対策の立て方はそれぞれですが、論文本試の傾向に沿った対策を早めに立てておくのがよいと思います。

例えば、答案構成の時間をなるべく短くして、論文を書く時間を長くとりたいという人は、受験機関の答練などで、1時間半の解答時間であっても1時間で答案を書き上げる練習をしてみるだとか、答練開始の30分遅れて試験会場に到着してみるだとかいろいろ対策を立ててみるのもよいでしょう。


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2005年11月02日

論文の書き方(10) 迷ったら書く

論文を書いていて項目を挙げるか否か迷った経験はないでしょうか。余計な項目を列挙するとそれだけ限りある紙面を埋めてしまう上に、時間もとられてしまいますので、結果として点数が伸びなくなります。従って、なるべく必要不可欠名項目のみを列挙することを心がける必要があります。

ただ、私の経験からいうと、書くかどうか判断できなければ迷わず書くというのがいいです。
迷っている時間ももったいないですし、検討した項目を書かずに点数を落とし涙をのむのは嫌ですから。
ですが、時間が足りなくなって必要な項目を列挙しきれない可能性があるので注意が必要です。

時間が足りなくならないだけの知識と筆力が必要でしょう。


【まとめ】

項目を列挙するかどうか迷うなら、ためらわずに書くこと

次回は、今回の内容をふまえて、意匠と商標の攻略の仕方について説明します。

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2005年10月29日

論文の書き方(9) 他の受験生の項目列挙を予想する

論文の書き方の9回目です。今回のポイントは「他の受験生の項目列挙を予想する」です。

項目はなるべく多く列挙した方がよいと前回書きましたが、何でもかんでも列挙すればよいと言うわけではありません。試験委員の項目リストに書かれているだろう項目を列挙する必要があります。そのためには、問題文からどの項目が項目リストに列挙されているかを予想する必要があります。ここでは、題意把握力が試されます。

ただし、今の試験は一部少数の合格者が受かる試験ではなく、4人に1人という確率で600人も合格する試験です。そうすると、他の受験生が挙げていない項目を一生懸命に挙げることに力を注ぐより、皆が挙げるような項目を落とさないよう心がけることが重要になってきます。それは、答練などの順位などでも分かることだと思います。

それでは、具体的にどの様な対策をしたらよいでしょうか。
論文試験は、各試験委員の先生が各自問題を作成したものを持ちより、その中からよい問題を選定して実際の試験問題とするそうです。毎年の試験委員の先生の情報は特許庁のホームページに公開されています。試験委員の先生方の本や雑誌の記事などに目を通しておくとよいかもしれません。

平成17年度弁理士試験委員の公告

他の受験生がどの様な項目を挙げてくるかを予想するための対策としては、受験機関の答練などを積極的に利用するのがよいと思います。特に、時間内に同じ本試と同じような環境で作成された受験生の優秀答案は他の受験生のレベルを知る上でも非常に参考になります。代々木塾の答練は受験生の優秀答案に加筆訂正を加えた形で活字という形で提供されますが、早稲田セミナーの答練は受験生の書いたそのものの答案のコピーが提供されますので、書かれた内容だけではなく、字の綺麗さ、文字の間隔、文字の訂正の仕方などいろいろ参考になる点もたくさんあります。

また、その年の各受験機関の講座のレジュメなどからも、受験生が書いてくる内容を予想することができます。特に、代々木塾の答案構成講座や各受験機関の答練などで出された問題と似たような問題が本試験で出題された場合は、合格レベルにある受験生はほぼ完璧に再現してくることが予想されますので注意しておくべきだと思います。

【まとめ】
  • 試験委員の項目リストを予想して、その項目を列挙することを心がける
  • 他の受験生が何を書くかを予想することが大切
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投稿者 nabe : 13:06 | コメント (1) | トラックバック

2005年10月28日

論文の書き方(8) とにかく項目を列挙する

今回からは、具体的な対策について書いていきます。
今回のテーマは、「とにかく項目を列挙する」です。

(今までのまとめの記事を書いているのですが、うまくまとまらないので(7)をとばして今回は(8)です。)

論文試験は、加点方式だと言われています。あらかじめ項目リストのようなものがあり、そのリストに挙げられている項目のみ点数の対象として、間違ったことが書かれていたとしてもその部分は見ずに減点はしないという方法です。

過去に試験委員をされた先生もそのようなことを仰っているので、おそらく現在でも加点方式による採点がされていると予想されます。

論文試験が加点方式だと仮定した場合、受験生はどういう姿勢で試験に臨めばよいでしょうか。
そうです。自分が得点につながると思うありとあらゆる項目を列挙すればよいのです。

項目を列挙するためには、どの様な項目があるかをあらかじめ知っておく必要があります。
そのためには、基本問題が非常に役に立ちます。基本問題はひとつひとつの条文や規定について丁寧に項目が列挙され、それぞれの項目について判断基準や理由付けがされているからです。

 

【まとめ】
 項目は可能な限り列挙すること。列挙する項目は、基本問題から学べ。

次回は、「ありとあらゆる項目を列挙することのデメリット」について書きます。

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2005年10月22日

論文の書き方(6) 当てはめ

論文の書き方の6回目。今回は、論文で非常に重要な「当てはめ」について書きたいと思います。

前回までで、問題文からの事実関係の抽出、条文の要件分けができました。

次は、条文の要件と事実関係とを照らし合わせてその条文の要件を満たしているかどうかの判断をします。この照らし合わせる作業が一般に「当てはめ」と呼ばれています。

基本問題のような抽象度の高い問題では、条文などの要件の列挙とその理由付けがメインになり、補足説明という形で具体例をちょこっと書きます。逆に、事例問題のような具体性のある問題を解答では、事例がメインで、それにいかに条文の要件を当てはめ結論を導くかがポイントになってきます。事例問題の論文で当てはめが出ていなければ点数はこないと思ってください。

出願の先後などの時間的な前後関係など問題文に明示されている事実関係であれば、条文の要件への当てはめは比較的簡単ですが、判断が難しくグレーゾーンの場合は、基本的に「判断基準」をあげて結論を出す必要があります。

判断が難しい場合というのは、たいてい判例などで争われていることが多く、判決などで「判断基準」示されていることが多いです。具体的には、均等論の判断基準、先使用権の権利範囲の判断基準、真性商品の並行輸入の判断基準、職務発明に関する判断基準などです。

判断する基準を提示して、事実関係がその基準を満たしているか否かを判断するのが「当てはめ」です。

条文の要件で問題文に明示的に示されておらず、また判断基準からも要件を満たすかどうか分からない場合は、「場合わけ」をする必要があります。ただ、本試の論文試験の問題でも細かいところまでチェックされて問題が作成されているわけではないので、問題自体に穴があることも多く、厳密に考えすぎてしまって余計なところで場合わけしてしまい題意から外れたことを多く記載してしまったということも結構あります。場合わけが必要かどうか迷うところで、出題者がそこでの場合わけを望んでいるかを判断するかを瞬時に判断しなければならず、ベテランでも苦労するところです。

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2005年10月18日

論文の書き方(5) 条文の要件

論文の書き方の5回目です。今回は条文を要件に分割する作業について説明します。

ターゲットとなる目的に直接関係する条文を見つけだしましたので、次はその条文を要件という小さい形に分割していきます。

基本的に、条文は大きく「条件」と「結論」に分割することができます。
例えば、「~のとき、・・・できる。」とか「~の場合、・・・できる。」というような条文であれば、「~」の部分が「条件」で、「・・・」の部分が「結論」です。「・・・とは~である。」など多少の変化形もありますが、ほとんどの条文がこの条件部と結論部から構成されています。

前回見つけてきた条文を見てみると、この「結論」の部分が最終的な目的となっていることが分かると思います。

条文の「条件」部分をもう少し詳しく見てみましょう。
「条件」部分は、いくつかの「要件」に分割することができます。
「要件」とは条件を細かく分割した各項目のことです。

例えば、

(差止請求権)
第100条
 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

であれば、「その侵害の停止又は予防を請求することができる」が結論。
「特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、」が条件。
そして、条件部分を意味をベースにしてもう少し細かく分割してみると、「特許権者又は専用実施権者」、「自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者」に分割することができます。このままでは少しわかりにくいので手を加えて
(1)「差止請求する者が特許権者又は専用実施権者であること」
(2)「自己の特許権又は専用実施権が侵害されたこと又は侵害されるおそれがあること」
の二つになります。

後者(2)はもっとより細かく次のように分割することができます。
(3)「自己の特許権を侵害されたこと」
(3’)「自己の特許権が侵害されるおそれがあること」
(4)「自己の専用実施権が侵害されたこと」
(4’)「自己の専用実施権が侵害されるおそれがあること」

以上を見てみると、(1)(3)(3’)(4)(4’)が100条1項の要件です。
(もっと要件を細かく分割しなければならないのですが、ここではここで止めます)

要件それぞれの間には関係性がありますが、条文で要件がどの様につながっているかをみれば分かります。
ここでは、(1)and{(3)or(3’)or(4)or(4’)}ということになります。
すなわち、(1)かつ(3)、(1)かつ(3’)、(1)かつ(4)、(1)かつ(4’)の四パターンのいずれかに当てはまれば100条1項に該当することになります。

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2005年10月10日

論文の書き方(4) 目標に関する条文の用意

論文の書き方の第四回目です。
今回は、目標に関する条文を用意することについて簡単に書こうと思います。

事実関係を抽出して、目標を設定したので、次は目標の実現の判断基準となる条文を見つけなければなりません。

例えば、「差止請求することができるか」という問題に対しては、「差止請求の可否」が目標となります。
そして、その目標について直に述べられている条文はというと、「特許法100条1項」です。

(差止請求権)
第100条
 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

問題文の事実関係が、この100条1項の規定に当てはまれば、目標を実現することができますし(差止請求することができる)、当てはまらなければ目標を実現することはできません(差止請求することがでいない)。ということで、100条1項が目標実現に直接関係する条文ということになります。

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2005年10月06日

論文の書き方(3) 問題文の理解と目的の設定

論文の書き方の第三回です。
今回は、問題文の理解と目的の設定について書きたいと思います。

問題文を自分なりに理解することができたら、次にするのは問題文に書かれていることから最終的に導き出したい事柄を目的として設定することです。

例えば、「以上の場合、被告はどの様なことを主張できるか」という場合は、「被告の主張」が目的となります。また、「~について論述せよ」という場合は、二つの対立する見解を比較検討してどちらか一方が優れているということを述べる必要があります。もっと具体的に、「差止請求はできるか」という問題の場合には、差止請求ができるか否かが問われていることになります。

最終的に何を出題者が求めているのかをしっかり把握して、最終的な結論を「明示的に」答案に書くことがとても重要です。結論を曖昧にしたまま答案を終了してしまうことは、採点者に結論はどちらでもいいですよといっていることと同じです。たとえ、それまでの論理構成から導き出すことができる結論が明らかであっても、明示的に結論を書く必要があります。

そのためにも問題文を読んで、最終的な結論となる目的を明確に意識する必要があります。

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2005年10月05日

論文の書き方(2) 問題文の理解と事実関係の抽出

論文の書き方の第二回です。
今回は、問題文の理解と事実関係の抽出について書きたいと思います。

前回は、題意把握について書きました。題意把握は、論文を書くというプロセス全体に関わることです。この論文を書くというプロセスは、大きく分けていくつかの小さなプロセスに分けることができます。それをひとつずつ見ていこうと思います。

論文筆記試験の問題文を読んで、まず行う作業が、問題文を理解して事実関係を抽出するという作業です。事例に関する記載が問題文中に書かれていますので、それを抜き出します。例えば、出願の時期、登録の時期、登録が無効になった時期などの先後関係や具体的手続きなどです。

事実関係の抽出は、問題文に書かれていることを漏れなく精確に抜き出す必要があります。それが題意を把握しているということです。出題者からのヒントが問題の至るところにちりばめられています。それを注意深く抜き出す作業が重要です。

ここの事実関係の抽出作業は、基本的に問題文を自分の理解できる形に変換する作業だと考えてもらっても結構です。わかりやすいように図で表したり、箇条書きにしたりして自分が理解しやすい用に書き替えたりしてもよいでしょう。

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2005年10月03日

論文の書き方(1) 題意把握

私なりの論文の書き方について書きたいと思います。これから書く内容は、万人共通でなく、それぞれの考えがあると思うので、参考程度に読んでください。

これから数回に分けて説明していきます。

論文を書く際に、もっとも重要なことは「題意を把握すること」でしょう。
「題意把握」とは、問題の出題者が意図することを理解すること。すなわち、出題者書いてほしいと思っていることを論文にして書くことです。小学校~高校までの国語の試験問題に似ていますが、出題者の考えていることを推測する力というのが非常に重要になってきます。

それでは、どの様にして出題者のいいたいことを推測すればよいのでしょうか。

結論から言うと、問題文を一言一言を丁寧に読むことです。
論文の問題を作成するとき、たいてい出題者は何を書かせたいかということをまず考えてから問題をつくります。そして、その書かせたい内容に基づいて事例を作っていきます。幸い弁理士試験の論文筆記試験の問題文にはいらない言葉はほとんど含まれていません。その一言一言が解答のヒントになっているといってもいいぐらいです。問題文に書かれている出題者からのヒントを漏らさず取り出すことが、題意把握の第一歩です。

ただ、どこがヒントになっているかというのは、ある程度法律的な知識、論文を書いた経験がないとなかなか見つけにくいというのが現実です。それ相応の実力も必要であるというのはいうまでもありません。

題意把握というのは、合格可能性の十分ある受験生でも非常に難しい問題です。ひとつ題意を把握し間違えて、論文の内容が全く正反対の内容になってしまうこともあり得るからです。項目ひとつ見落とすことで、合格不合格が決まってしまうこともあり得ます。十分に実力がある受験生でも論文試験で不合格になるのは、この題意把握ミスによるところが実は非常に大きいのではないでしょうか。

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