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2005年09月08日

4条1項8号の「著名な略称」の判断について

平成17年07月22日 第二小法廷判決 平成16年(行ヒ)第343号 審決取消請求事件
要旨:  登録商標「国際自由学園」が商標法4条1項8号所定の他人の名称の著名な略称を含む商標に当たらないとした原審の判断に違法があるとされた事例
本件商標「国際自由学園」が上告人略称「自由学園」を含む商標であること,上告人が被上告人に承諾を与えていないことは明らかであるから,上告人略称が上告人の名称の「著名な略称」といえるならば,本件商標は,8号所定の商標に当たるものとして,商標登録を受けることができないこととなる。  商標法4条1項は,商標登録を受けることができない商標を各号で列記しているが,需要者の間に広く認識されている商標との関係で商品又は役務の出所の混同の防止を図ろうとする同項10号,15号等の規定とは別に,8号の規定が定められていることからみると,8号が,他人の肖像又は他人の氏名,名称,著名な略称等を含む商標は,その他人の承諾を得ているものを除き,商標登録を受けることができないと規定した趣旨は,人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち,人は,自らの承諾なしにその氏名,名称等を商標に使われることがない利益を保護されているのである。略称についても,一般に氏名,名称と同様に本人を指し示すものとして受け入れられている場合には,本人の氏名,名称と同様に保護に値すると考えられる。  そうすると,
人の名称等の略称が8号にいう「著名な略称」に該当するか否かを判断するについても,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべき
ものということができる。  本件においては,前記事実関係によれば,上告人は,上告人略称を教育及びこれに関連する役務に長期間にわたり使用し続け,その間,書籍,新聞等で度々取り上げられており,上告人略称は,教育関係者を始めとする知識人の間で,よく知られているというのである。これによれば,上告人略称は,上告人を指し示すものとして一般に受け入れられていたと解する余地もあるということができる。そうであるとすれば,上告人略称が本件商標の指定役務の需要者である学生等の間で広く認識されていないことを主たる理由として本件商標登録が8号の規定に違反するものではないとした原審の判断には,8号の規定の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ない。


商標法4条1項8号の「著名な略称」であるか否かの判断基準を示した判例です。
指定商品・指定役務を元にその需用者(のみ)の視点にたって「著名な略称」かを判断するのではなく、その略称が一般的に受け入れられるかどうかを判断しなければならないと述べています。

よくこの4条1項8号の適用を議論する場合に、指定商品等と切り離して適用してよいか否かという議論があります。条文上は、指定商品等については何ら規定していないので、「原則として」指定商品等に関係なく4条1項8号の適用はあります。ただし、全く無関係な商品等にまで拡張させると人格的利益を超え過剰に保護してしまい、産業の発達を阻害するおそれがあるので、指定商品等も考慮すべきであり、全く関係のない指定商品等の場合には適用がないというものです。

ここでは、その逆に指定商品等の需用者層のみを考慮するのではなく、常に本人を指すか否か一般に受け入れられるか考慮しなければならないと指定商品等にとらわれないより原則にたちもとった形の結論になりました。

この結論は、全く無関係の商品等にまで拡張させてよいという結論ではなく、むしろ指定商品等「のみ」考慮してはならないという結論だと考るべきです。
一般に受け入れられているかを判断するのは難しく、どこまでその適用を認めるかは議論が分かれることと思います。おそらく、立場によって主張する論理は異なってくるはずです。

※2005/09/12修正

あと、個人的に興味深かった点として、原審では、

本件商標「国際自由学園」が学校の名称を表示する一体不可分の標章として称呼,観念されるものであることを考慮すると,本件商標に接する学生等が,本件商標中の「自由学園」に注意を引かれ,本件商標が上告人の一定の知名度を有する略称を含む商標であると認識するとは認めることができない。

と判断していましたが、最高裁の判断では、「国際自由学園」が「自由学園」を”含む”とのみ述べ、一体不可分か否かについては言及していませんでした。条文通りの適用ということです。


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投稿者 nabe : 2005年09月08日 23:20

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